仕事なの?休暇なの?ワーケーションとは
ワーケーションという言葉をご存じだろうか。ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を合わせた造語でリゾート地などで、休暇を兼ねてリモートワークを行う労働形態を示している。
ワーケーションの定義は「旅行中だが出勤扱い」という認識もあれば「非現実的な場所で働きながら休暇を取得」といった認識もあり、働く側から見れば「休暇なのか仕事なのか」という混乱も避けられない。
そもそも祝日の増加や有休休暇の取得促進など、「仕事」と「休暇」は白黒つけるものとしてとらえられているがワーケーションは仕事と休暇を組み合わせた、白黒つけないワークとライフの全く新しい在り方なのだ。
ワーケーションの背景
ワーケーションが発祥したのはアメリカ。欧米人は休暇を取得しやすく、長期休暇でリフレッシュしながらワークライフバランスをとっているというイメージが強いが、意外にもアメリカは日本同様に有給取得率が低い。休暇を取得しても旅先で仕事の連絡が入り、結局仕事をしているケースなども多く、こうした労働環境が社会問題化していた。そこでオン・オフのメリハリをつけにくい状況を逆手に取りワークとライフをハイブリッド化し、双方の質を上げようという試みでワーケーションが始まったと言われている。
ワーケーションはワーカーにとって休暇が取得しやすくなり自由な働き方ができるというメリットがある。また、多様な働き方を求められる企業にとっても人材の確保や定着促進のための施策につながると言われている。
リモートワークとの違い
リモートワークとの違いは「働く場所を限定しない」ということ。従来型の在宅勤務(テレワーク)やリモートワークは会社が認める特定の場所のみで可能だが、ワーケーションは旅行先で休暇やレジャーと組み合わせながら働くことを指しており、ワーカーのリフレッシュにつなげることを目的としている。
ワーケーションで期待できること
ワーケーションの効果として仕事の効率アップとストレス減などが上げられる。
NTTデータ経営研とJTB、JALは2020年6月、沖縄でワーケーションの効果を検証する実験を実施した。実験はカヌチャリゾートを宿泊先として金曜日から週末を含む3日間、同社の18人の男女が参加して行われた。宿泊する自室に加え、Wi-Fi環境とソーシャルディスタンシングを確保した執務エリアを設け、1日目の金曜日は正午から20時までを勤務時間とし、土日は原則として自由時間。仕事をする必要がある人は任意で業務時間を設けて実施された。
ワーケーションの結果。参加者が所属する企業への帰属意識が高まり、仕事の生産性が20.7%上昇し、それがワーケーション終了から5日間持続。仕事に対するストレスは37.3%低下する結果が得られたという。(Aviation Wire記事参照)
旅先で得たアイデアを仕事に生かす
日常と異なる環境で仕事をすることで、生産性やストレス減の効果が得られることがわかった。
さらに地元の人との交流や観光などその地域ならではの活動を通して新たなアイデアが思い浮かんだり、モチベーションを維持しながら仕事ができたりといった効果が期待できるだろう。
またワーケーションを通して、宿泊施設や観光地の平日の利用者や地域間交流を増進させる、観光産業の需要拡大も望まれている。
2019年11月にはワーケーションを受け入れる全国の自治体が集まって「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」を設立し、北海道や長野県など1道6県58市町村が参加している。
WAJではリゾート地や温泉地、さらには全国の地域で、仕事を継続しつつ、その地域ならではの活動を行う「移住未満・観光以上」の受け入れを推進している。
それぞれの企業に合ったルールにカスタマイズを
仕事の時間と場所を縛られないというメリットがある一方でTwitter上では「有休の消化さえままならないのに無理」「働くなら休暇ではない」など実現性に対して批判的な声も上がっている。
また、実現可能な職種とそうでない職種があることは明確だ。例えば、企画やクリエイティブ、ITなどの職種に就く人には喜ばれるかもしれないが、医療・介護・保育・ドライバー・販売・建築など持ち場を離れられない職業の人には不可能だろう。
リモートや在宅で仕事をするメンバーが多い企業には向いていると言えるが、それでも自由度の高い働き方を尊重する職場の風土作りがより必要となってくる。
トライアルでワーケーションを導入してみては?
述の通り、ワーケーションには期待できることが多いながらも制度化して企業に導入するためには解決すべき課題が多くトライアルアンドエラーが必要になってくる。
まずは、リモートワークが可能な職種で少人数、短期間から実施してみるのも手段だ。
株式会社ブリッジでは、ワークアズライフ「仕事とプライベートを分けることなく仕事と生活を調和させる」という考え方を推進しており、住まいと仕事を同時に探せる求人検索サービス「入寮ドットコム」を提供している立場からワーケーションを推奨し、ワーケーション導入企業を誘致したい旅館や民宿のサポートも実施している。